線虫がん検査は怪しい?費用、保険適用、精度、詐欺、疑惑、信憑性は?


医療って日々進化していますよね。

筆者は現役看護師ですが、どんどん新しい薬や治療や検査が取り入れられているのを実感しています。

治療や検査が保険診療内のものであれば聞きなじみもありますが、保険が効かない自費診療となると範囲が多すぎて正直患者さんから聞いてもわからないことが多いです。

最近では、「線虫がん検査」というがん検査が話題になっているようですね。

線虫がん検査とは、世界初の人間の尿1滴で体内に癌が発生しているかどうかを見分けることができる自費の検査です。別名、N-NOSE(エヌノーズ)ともいわれます。身体に負担がかかる検査を受けずに、尿だけで結果がわかるという点で注目を集めているようです。

メディアなどを使って大々的に発表・宣伝をしている線虫がん検査ですが、実際は医療者から疑問の声があがっていたり、ニュースで疑義特集が組まれていたりして「怪しい」と思ってしまう要素がいくつかあることがわかりました。

今回は、現役看護師でもある筆者が線虫がん検査が怪しいと言われる10の理由をまとめました。

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線虫がん検査が怪しいと言われる理由

①精度が低い疑惑がある

線虫がん検査によるがんの正解率は86%と報告されています。正解率86%とは、かなり高い数字ですよね。しかし、実際はの医療現場からは線虫がん検査の正解率に対して疑問の声があがっているようです。

3つの医療機関で行われた調査では、線虫がん検査でがんの確立が高いという判定を受けた患者にPET-CTという画像検査を行ったところ、実際にがんが判明した患者はわずかだったというのです。

調査結果から、線虫がん検査は本当は陰性であっても陽性が出てしまう「偽陽性」が多いのではないか、という疑問が生まれています。

線虫がん検査は自費の検査であり、1回の検査で高額な費用がかかります。せっかく高額な費用を払って検査をしたのに、精度が曖昧となるとガッカリしますよね。これが本当であれば、相当問題です。

②検査の注意点に関する疑問

線虫がん検査を行っているHIROTSUバイオサイエンス社のホームページによると、検査のための尿をとる際の注意点がいくつかあります。

以下の場合は採尿を避けて別の日に採尿することを勧めています。

  • 体調がすぐれないとき
  • 疲労が激しいとき
  • 長期の睡眠不足や徹夜明けのとき
  • 感染症に罹っているとき
  • アルコール摂取時もしくはアルコールの影響が残っているとき
  • 妊娠中のとき
  • 生理中のとき

引用元:HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術

医療機関で行われるがん検査の主なものとしては、血液検査やCTなどの画像検査、胃カメラなどの内視鏡検査です。これらのがん検査は疲労や睡眠不足が結果を左右することはありません。

線虫がん検査は尿で判定するので、妊娠中や生理中は避けることは、素人でもある程度理解できます。

しかし、疲労や睡眠不足などによっても結果が左右されるとなると、信憑性を疑ってしまいますよね。

人によって疲れの耐性は様々です。自分では元気だと思っていても、実は疲れが溜まっている状態だったということもあり得ます。

もし検査の結果「偽陽性」や「偽陰性」だったことが判明した場合も、「疲れが溜まっていたからでしょう」という逃げ道を作られてしまう可能性も出てきます。

③元研究員による証言

2023年のNewsPicksのスクープによると、線虫がん検査を行っているHIROTSUバイオサイエンスの元社員達の気になる証言があるようです。

元社員の証言によると、がん患者と健常者では線虫の動き方がはっきり分かれるという論文の発表に対して、実際には同じようなはっきりとした違いを再現できた研究者はいなかったとか。

しかも同じような証言をした元社員が複数いたということなのです。元社員というのは、実際に研究に関わっていた研究者だそうです。複数人が同じような証言をしているという点で、信憑性がありますね。

元社員の証言が本当なら、論文で発表したときにたまたま線虫の動きがはっきり分かれたというだけで、再現性がないという証明になってしまいます。

一体何を信じればいいのでしょうか。怪しいです。

④保険適応外の検査である

私たちが保険適応で受けられる診療は、しっかりとした根拠が存在するということで国に認められた診療です。

逆に保険適応外の検査や診療は、国に認められていないということです。正確には、まだ有効性を検証する段階であるということ。線虫がん検査は保険適応外の自費検査であることから、結果にしっかりとした根拠が十分に認められていないということになります。

保険適応外の診療や検査を受けるのは自由ですし、誰でも受けることができます。受ける際は、有効性を検証する段階であるということや十分に認められたものではないということを理解した上で受けることが大切です。

ただし、まだ線虫がん検査を受けた人が少なく統計が取れないという可能性もありますので、有効性や根拠が認められれば今後保険診療になるかもしれません。動向を見守りたいところです。

⑤著名芸能人を使ったメディア戦略

線虫がん検査は、広告にも力を入れています。著名芸能人を起用し、CM放映などのメディアへの拡散を積極的に行っています。起用されている芸能人が持つイメージや影響力によって、信頼を勝ち取っているといっても過言ではありません。

線虫がん検査は保険適応外の自費検査ですので、払うお金も高額です。芸能人によるイメージ戦略を鵜呑みにしすぎず、本当に信用できる検査なのかということをホームページや口コミなどの情報を参考にしながら判断していく力が必要になりますね。

⑥大手企業との提携

線虫がん検査は、多数の保険会社とも提携しています。NewsPicksの取材によると、線虫がん検査の会社と提携している保険会社に疑惑の件を認識しているかを問い合わせたところ、疑惑を認識はしているが、線虫がん検査の会社に問い合わせて問題ないという回答をもらったとのことでした。

疑惑に対する詳しい調査はしないまま、保険会社も提携を続けているようです。

⑦高額な自費診療に誘導している?

線虫がん検査で陽性の結果が出たあと、検査結果を理由に精密検査を受ける場合、保険適応にならないようです。

線虫がん検査ではがんの有無を判断する検査のため、身体のどの部分にがんがあるのかまではわかりません。がんが身体のどこにあるのかを調べるためには、頭部から足先までの診断ができるPET-CTという画像検査を受ける必要があります。

ただし、PET-CTは自費診療のため高額です。線虫がん検査だけでも高額な費用がかかる上、さらに精密検査が必要となると重ねて費用が必要になってきます。

陽性が出てしまえばどんどん医療費が高額になっていくため、患者の不安を煽って高額な医療費を払わせていると思われても仕方がない気がします。

⑧どんどん高くなる検査費用

当初、線虫がん検査キットは9800円で販売されていましたが、2021年から12500円、現在では14800円(定期検査コースは13800円)に値上がりを続けています。

値上がりの理由は「検査キットが新しくなったため」と説明されていますが、かなり短いスパンでの値上がりが行われていますね。

線虫がん検査は保険適応外の検査で、これから有効性を検証していく段階にあるので検査キットも進化させていく必要があるのでしょうか。

費用が高額になるほど試したいと思う人は少なくなりそうですが、富裕層狙いなのでは……?と疑ってしまいます。

⑨医療機関が次々に声明を出している

線虫がん検査が発売された頃は話題となり一気に広がりを見せました。しかし週刊誌の特集記事で疑義が掲載されたり、ジャーナリストからの反論があったりしたことで、PET-CT検診に関係する関連学会による精度検証のための全国調査を開始されています。

精度については現在調査中とのことなので、正確な精度がわからない状態で検査は勧められないと、医療機関も困惑しているようです。

線虫がん検査を理由にPET‐CTを予約した人のキャンセルを受け付けている医療機関もあり、疑惑は医療機関にも広がっている様子がわかります。

⑩簡単すぎる検査方法

線虫がん検査は、専用の検査キットを使って尿1滴でがん検査ができます。従来のがん検査は医療費を払って画像検査を受けるか、血液検査や内視鏡など身体に侵襲を与えなければ検査できませんでした。

尿1滴で検査できるとなると、普通の尿検査と変わらず簡単に苦痛なく検査できるのは、画期的ですよね。

線虫がん検査が怪しいと言われる理由を調べたあとに改めて考えると、こんな簡単に検査できちゃっていいの?と怪しく感じてしまいます。

線虫がん検査は怪しい?まとめ

線虫がん検査が怪しいと言われる10の理由を調べてみて、怪しい疑惑があり保険適応外であることからも簡単に人に勧めることはできないと感じました。

しかし線虫の動きでがんの有無を判断できることを発見した研究者たちは、地位や名誉のためだけに線虫がん検査を世に出したのでしょうか?がんを早期発見できるように、という思いもあったはずです。

あらゆる検査や治療には必ずメリットとデメリットがあります。詳しい説明をしっかりと聞き、十分に理解してから受けるようにしたいですね。